4~5か月短縮可能である

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村田光平さんから便り

福島第一から事故処理にかかわる会社の責任者より、重要な連絡を受けましたのでお伝えいたします。

その骨子は次の通りです。
①地震が頻発する状況下で最も懸念されるのは、汚染水問題よりも4号機の問題である。 

②燃料棒の取り出しが始まっているが、1日シフト2交代8時間のペースで1年以上を要するとされる。しかし、日夜24時間作業に切り替えれば4,5か月短縮可能である。そうすれば2014年夏には取り出し完了となる。

③クレーンの安全性が高いので、作業は比較的単純であり訓練に時間を要しない。作業員の確保が問題となるが、運転停止で余裕のある電力会社が協力すれば解決するはずである。事故直後には電力会社の協力が得られたがごく短期間で終わってしまったのは残念である。福島県警に対しては、警察はいまだに全国規模の協力を続けている。

④こういう時期に電気事業連合会の一切支援がないのは理解に苦しむ。

⑤現在の国際協力では未だ必要な技術が得られておらず、凍土壁の建設についても問題が指摘されており、特に凍った水が溶けたら一大事であり、関係会社の技師の中にその効果に疑問を隠さないものも見られる。


事故処理の国策化を訴え続けてまいりましたが、この連絡を受け益々その必要性を痛感いたします。事故処理を最優先の課題として最大限の対応をしていないことが、具体的に現場を最もよく知る者から指摘されたからです。4号機問題が世界の安全保障問題であるとの認識が、世界の見識者の間で確立している状況下で、24時間体制で燃料棒取り出しを急ぐことを回避することはできないと思われます。

12月29日、戸内寂聴さんとドナルド・キーンさんは、テレビ対談で東京オリンピックに反対の立場を表明していらっしゃいました。世論に影響を与えるものと思われます。1月3日も瀬戸内さんは野際陽子さんによるテレビ・インタービューで同様の発言をしました。IOCも傍観できなくなると思われます。

世界が日本は事故処理に最大限の対応をしていないと見るに至れば東京オリンピックの返上は避けられなくなると考えます。福島第一の帰趨が日本を、世界を変えていくはずです。事故処理に最大限の対応を強いられれば不道徳がただされていくものとみております。 

巨大地震の発生がないよう祈ることしかできない日本の国家危機の先行きに懸念を深めております。

村田光平

■追伸
年末年始に3号機から生じる白煙が、下記資料の通りネット上大騒ぎとなりました。「アメリカ西海岸は放射能雲到達に備えよ」
http://www.turnerradionetwork.com/news/146-mjt

アーニー・ガンダーセン氏の見解を入手することができましたので、とりあえず安心できました。冷温状態のものがなぜ蒸気を出すのか究明を要するようです。4号機に加え、3号機が福島事故処理に関する国際社会の危機感を深め出しております。

 

 

 

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 表紙3日.jpg

 

対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF: ★新春対談 第一部・二部・三部(2014.1.3).pdf
 

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■忘れる、忘れさせる

 

高橋

事故当初は東京でも、何を食べたらいいのか、どこで外食したらいいのか、特に子どもを持つお母さんたちはとても心配していました。しかし1000日過ぎて、どうも食料に対する放射能意識が少し薄れている気がします。だけど、汚染水は大量にどんどん垂れ流されていて、魚は特に心配です。食料は特定地域の問題ではなく、全国の問題です。ただ、そうは言っても、幸せを感じるためには、嫌なことは忘れたいという人情も分かります。今日はお正月で、家族みんなでおいしいものを食べていると思います。

 

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心配ですね。私はオリンピック問題でも、実は国際的にこの事故のことを忘れさせようという大きな戦略があるのではないかと思っています。しかし、福島のことを忘れさせることができるとしても、地球的規模に拡大しつつある海洋放射能汚染は隠せず、世界は目覚めつつあります。事故を矮小化(わいしょうか)させようとする、放射能の恐ろしさを矮小化させようとする動きがあることは否定できません。

 

高橋

問題を小さく見せようとする矮小化作業の一方で、被害は逆にどんどん顕在化します。

 

村田

私は、この状況をある段階で是正しないと、日本国民の将来は嘆かわしいものになると思います。そして、あと数年で目を覆うような被害が表面化しだすと、電力会社と一蓮托生でやっている政治家にとり、致命傷になると思います。世論は激変するでしょう。

 

川内さん

矮小化の一番ターゲットになるのは、福島そのものですね。住民はいつでもニコニコしていれば放射能に対して免疫力が保てる、そして福島のことを大事にしない人は風評加害者だ、絆を大事にしない奴らなんだと批判して、福島の市民を抑え込んでいるのです。10月にIAEA(国際原子力機関)の調査団が来て、日本は立派に除染をやっていると褒めあげて帰りました。じゃあ、なぜ原発の敷地に入らないのですか。そこの土を少しでもサンプリングすれば、もしかしたら、事故は水素爆発ではなく水蒸気爆発だったかもしれない、あるいはそれを超えて即発臨界爆発(燃料のみで臨界して爆発に至る)が起きていたかもしれない。そうではあれば、チェルノブイリどころではないとてつもない事故となります。そうした、基本的な調査すらせずに、福島を抑え込んでいるのです。

 

 →facebookここまで

 

 

村田

今の世界の各国政府はIAEAに加盟しており、原発容認なのです。IAEAは電力会社と密接な関係にあることは周知の事実です。したがって、日本に対する助言もこうした立場から行われています。これは悲しいかな、世界の実態です。しかし、この事故はすでに電力会社の経営危機ではない、国家の危機なんだ、という認識が徐々に広がりつつあります。それは、監督官庁の中でも同じように浸透しつつあります。私は経産省の事故対策に責任ある課長とメール交換ができるようになりました。あらゆる立場を超えて、国家の危機に対応すべき段階に来ているのです。

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川内

心ある見識者やリーダーが原発の問題をしっかり把握・理解して、脱原発をはっきりと表明しています。ところが、その一方で、国民はそのことを忘れ「させられ」ようとしています。原子力ムラは、その忘れさせようとする流れに乗っかっているのです。しかし、こうした国家的危機の時、彼らが相手にすべきは私たちなのです。はっきりと反対する私たちと、きちんと議論するべきなのです。

  

  

 

 

 

 

 

 

 

■脱原発の他律的トレンドはあるか

 

高橋

脱原発を運動として市民、見識者、政治家がすすめていく必要があることは既定路線です。こうした自律的・主体的な側面とは別に、他の要素が原発を封じ込める、他律的トレンドがあると思いますか。

 

村田

まず、アメリカがどんどん変わりだすと思っています。最近では米国原子力規制委員会のアリソン・マクファーレン委員長が、原発を作るにはまず廃棄物の問題を解決してからやるように、とはっきり言いました。それから、元・規制委員のピーター・ブラッドフォード氏は、安倍首相が海外に技術協力を求めるのはいいけれど、事故処理の主体が東京電力ならば、日本の原子力ムラが国際原子力ムラに代わるだけだとの発言が伝えられております。つまり、原子力ムラから切り離すという意味でも、日本の国策でやるべきだ、と示唆したわけです。しかも、アメリカのエネルギービジネスにおいてはすでに安全対策強化により原発はコスト的に劣勢ですし、テロの危険にも怯えている始末です。

 

高橋

アメリカはシェールガスが価格破壊を起こして、すでに原発が5基程度止まっていますね。

 

村田

そうです。そしてビジネスに限らず、世界の良識こそが他律的なトレンドとして日本に影響を与えるでしょう。マハティールさん(マレーシア第4代首相)が、事故以来3通も手紙をくれました。そこには、原子力は人類がまだ制御できないし、核反応は起こせても放射能の無効化はできない、だからこれまできっぱりと拒んできた、と書いてありました。彼は、私が所属する地球システム・倫理学会が提唱している国連倫理サミット、そして、3月11日の地球倫理国際日に大賛成と、エールを送ってくださいました。最近、オバマ大統領、国連事務総長にメッセージを書きましたが、それは、国際的な多数の良識派の有志の依頼を受けたものです。世界の良心は、すでに国際トレンドの基盤を成しています。さもないと、世界は終わるわけです。

 

高橋

アメリカの原発衰退のトレンドは、シェールガスの台頭が背景にあります。こうした、コスト問題が日本にも影響を及ぼすのでしょうか、あるいは、相変わらず総括原価方式で、国民は分からないまま過ごすのでしょうか。

 

川内

電力システムの方向性は、経産省が管轄する「電力システム改革専門委員会」で決めるのですが、総括原価方式は当面の間、残す、とはっきり方針化されています。

 

高橋

そうですね、2012年2月から1年間12回開催された同委員会では、総括原価方式の維持を早々と決め、後は発送電分離がどんどん形骸化される、電力会社にとって都合のいい議論だけがされました。昨年2月に、報告書が書かれています。

 

経産省:「電力システム改革専門委員会」議事録

http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/2.html

 

川内さん3.2.jpg川内

日本のLNG(天然ガス。熱効率がもっとも高く、ベース電源やピーク時をもカバーする火力発電にも使われる)の最大の購入者は東京電力です。彼らには総括原価方式があるので、いくらの値段で買おうが構いません。総括原価方式は、コストにパーセントを掛けて利益を決めるので、高い値段で買う方が彼らは儲かるのです。LNGを安く買うというインセンティブ(モチベーションを誘引するもの)は、まったく、ないわけです。

 

高橋

財務省は貿易収支が赤字になるというのは、火力発電の電源構成比が上がったからだと言っています。昨年の輸入総額の内、7%程度(LNG:原油=7:3)が火力発電のために化石燃料の輸入がされました。ただし、メーカーなどの大企業は自社で火力発電所を所有しており、すでに原発54基分以上の発電力を持っています(企業5582万Kw、原発4353万Kw)。この分を考慮すると輸入総額の7%の内、2~3%は直接大企業が自家発電に使い、残り5~4%程度を電力会社が使っていることになります。同じ購入価格と言うことが前提ですが。

 

川内

そうですね。大企業は電力を自家発電でまかなっても、圧倒的に数の多い中小企業にとっては、電力会社の電気料金値上げは大きなコスト圧力になります。電力会社にとって最も大きな収入源となっている家庭も負担が増大しています。問題は、そうした事実を積み上げながら、「原発を動かさなかったら、値上げするぞ、日本経済がだめになるぞ」と脅しをかけていること自体が、非道徳なことなのです。そもそも、もっとも発電に使われているLNGを、政府や産業界でまとまって安くする交渉をすることこそが、日本経済のために必要なわけです。

 

 

■マスコミの果たす役割

 

高橋

国民は、経済がだめになる、という脅しには弱いですね。二つの選挙で自民党が生き返ったのも、原発に不安な気持ちは強いのだけど、長期的な不景気にはこりごりだという思いが、かなり働いていたと思います。

 

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今日にでも強い地震が来て、原発がどうなるかわからないときに、多くの国民に危機感が絶無、というのはマスコミの責任だと思います。

 

川内

本来は、マスコミの果たすべき役割は、複雑な現代ではとても重要なものだと思います。しかし彼らは、記者クラブに居座って、政府、大本営が発表するペーパーをそのままニュースの記事に書いているのですから、まったその機能を果たしていません。真のジャーナリズムがないと、世の中はおかしな方向に行ってしまいます。

 

村田

そのマスコミが、報じなかった、重要なことがいくつかあります。核戦争防止国際医師会議(IPPNW。1985年にノーベル平和賞を受賞)が、これまで核兵器だけに反対していたのですが、昨年(2013年)の6月についに原子力の平和利用、つまり原子力発電に反対の立場を打ち出したのです。私は、すべての主要なマスコミに知らせましたが、一切、報じられませんでした。それからユネスコクラブ世界連盟が、昨年3月に、3月11日を地球倫理国際日として公式に提案しました。また、昨年11月ウイーンで開催された世界宗教者会議は放射能の脅威からすべての生き物及び未来の世代を守るよう訴える宣言文を採択したのです。マスコミはこういうことを報じないのですね。

 

 

■来年、何をするか

 

 

高橋

さて、今年は自民党が原発の再稼働に向けて全力でやってくる、大変厳しい年になりそうです。そうした中で、お二人は何をしていいきますか。

 

川内さん3.3.jpg川内

私はこれまで福島原発事故の原因について、地震で配管が損傷したのではないか、と調査して来ました。1号機の中に、民間人としては初めて入り、配管損傷に関する有力な証拠となる映像も撮ってきました。ひとつ目は、引き続き、この調査を続けて、事故の原因を明らかにしていきます。

ふたつ目は、大規模集中型の原発は、これからの地方の時代、中小企業の時代、あるいは生活者の時代には合わないわけです。小規模、分散型、地産池消型の電源・エネルギーというものを各地に、地域の人々の手によって作りだしていく必要があります。私は中小企業のみなさんと組んで、天然ガス火力発電所を設置したり、あるいは地元が鹿児島で地熱の宝庫ですから地熱発電所を設置したりしたいです。こうやれば、ほら、地域は良くなりますよ、と言葉ではなく、実際に取り組むつもりです。

 

村田

私は最近、『核廃絶に向けての日本の歴史的使命』という文章をオバマ大統領に送りました。その中で、国際タスクフォースの設立及び事故処理の国策化の必要性を訴えました。国連事務総長には、福島の教訓を学ばなければ電力会社によって世界の命運は左右されるとの警告を伝えました。そして、ケネディー駐日大使には、日米関係において核廃絶は中心的協力分野になりうると考えを伝えました。

今年は、3月に開かれるユネスコクラブ世界連盟のニューヨーク総会に私は招かれていますから、「核兵器のない世界」を唱えるオバマ大統領に、「核兵器も、原発もない世界」にまでそのヴィジョンを高めてもらうように働きかけたいと思います。核廃絶の実現には、「力」の父性文明から「和」の母性文明に変えること、そのために地球倫理を確立することが必要です。従って、国連倫理サミットの開催は核廃絶への入り口です。オバマ大統領にこのためイニシャティヴを取られるよう訴え続けます。ケネディー駐日大使は昨年末、長崎を訪問されました。大使の日本での活躍に期待したいです。

 

 高橋

お二人のご活躍に、心から期待します。さて最後に、そうした難しいことができない普通のお父さん、お母さんはどうしたらいいでしょうか。

  

川内

「忘れない」ことだと思います。忘れてはいけないことが、人生の中にあります。福島の事故は、絶対に忘れてはいけないことです。みんなが、忘れずにいたら、必ず脱原発の社会は実現できます。だから、忘れないことが、何よりもしなければいけないことです。

  

村田

福島事故が世界に示したことは、原発事故はひとつの国家、あるいは電力会社では解決できないということです。原発を多数抱えた国家の国民として、福島であるいは県外で、いまだ避難生活を強いられている14万人の方々の苦しみに、想像力を働かせてほしいということです。家やふるさと、仕事、友人などすべてを失う想像を絶する生活の悲惨さを考えてほしいです。

  

川内

私、嫁の誕生日を忘れて、めちゃくちゃ、怒られることがあります。でも、この原発事故は、ぜったい(強調)、忘れてはいけないことです。(爆笑)

 

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プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

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真面目な二人.jpg

  

 

対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF:  ★新春対談 第一部・二部(2014.1.2).pdf

 

第二部.jpg

 

 

 

■小説『原発ホワイトアウト』

 

高橋

『原発ホワイトアウト』という小説が話題になっています。現職の官僚によって多数の事実をつなぎ合わせて書かれたというこの本には、東電が破たん処理できない背景として、総括原価方式で貯めたお金、毎年800億円を政治家やマスコミにばら撒いて、東電の意向に沿うように誘導していると書いてあります。

その中で、長崎の落選国会議員を訪ねて、生活が大変でしょうから○○大学の講師をやっていただけませんか、と誘惑する逸話がありました。これは、驚くべき長期的な布陣の引き方です。安定した収入が将来もしっかりと約束されているから、短期的な視点に立たないということでしょう。ところで、鹿児島の川内さんのところにも訪ねて来ましたか。

 

川内

いや、いや、ないですよ。僕のところには、さすがに来ないでしょう(一同爆笑)。

 

高橋

小説の話に過ぎませんが、あのようなことは、実際はありうるのでしょうか。

 

川内

私は、そういう事例は直接訊いたことはないですね。たぶん、水面下で行われることでしょうから。ただし、総括原価方式は情報公開も迫られることもないので、そうしたロビー活動などにも使われているのは、想像に難(かた)くないでしょうね。

 

高橋

省庁は違いますが、元官僚でいらっしゃる村田さんにうかがいます。あの本の中で「神は細部に宿る」という文言があって、長く複雑な法律の中にともすると見逃しそうな『細部』にこそ、運用する官僚側が自由にできる裁量があると言っていますが、どう思われますか。

 

村田さん2-1.jpg村田

そうだと思いますね。著者は現職の官僚ですから、自分の省庁を救うために、あるいは日本を守るために、本当のことを語る「炭鉱のカナリア」になって、そのことを伝えています。この本は、今、どんどん読まれています。この影響は、国内はもちろんのこと、国外にも影響を及ぼすと思われますね。そもそも、小説の中でそうしたロビー活動をしているという『日本電力連盟』(電気事業連合会のこととみられる)が、法人格を持たず任意団体でどこの監督も受けない現状を、早急に是正する必要があることが同書で強調されております。

 

 

 高橋

心ある官僚の方と言うのは、まだ、まだ、いらっしゃいますか。

 →facebookここまで

 

 
村田

もちろんです。もともと志をもって官僚になったわけです。経産省の元官僚である古賀茂明さんを尊敬している現職者もかなりいると思います。あの本が、出版に至ったということは、それだけでもかなりそうした素地ができてきているのだと思います。

 

高橋

川内さん、東電の破たん処理について、どこかの政治母体からはっきりとした政策として、今後出てくる可能性はありますか。

 

川内

まだ、政治家も官僚も、個人的な段階かもしれませんね。なかなか、一筋縄でいかないかもしれません。ただし、少なくとも私の所属している政党(現:民主党)から、そうした主張が組織的に出てこなければいけないと思っています。

 

 

■小泉元首相の発言

 

高橋

安倍政権が再稼働の準備をすすめるなか、小泉元首相が即時脱原発をめざすべきだと安倍首相にはっきりと提言しました。このことは大きなニュースにもなり、脱原発派を勇気づけるものでした。ところで、アメリカのエネルギービジネスは現在、原発のパテント(特許)による利益構造と、シェールガスによる新しい利益構造が衝突、あるいは過渡的な交錯をしています。私は、こうした経済の競争関係が背景にあるのではと気になっています。

 

 

川内

そもそも、小泉純一郎さんのお師匠さんである新自由主義派の経済学者、加藤寛さんは脱原発を提唱していらっしゃいます。この方は、電電公社も国鉄も、解体・分離してそれぞれやればいいのだという民営化論者で、地域独占の電力会社も自由化・本来の民営化を行うべきだとして、発送電分離と脱原発を主張されています。そうした意味では、新自由主義的な文脈で小泉さんは脱原発をおっしゃっていると思います。それと、「いますぐ脱原発」という部分については賛同しますが、一方で、「最終処分場もないのに」という言葉は、最終処分場があればいいのですか、ということになる。ここは、少し気をつけていた方がいいのかと思います。しかし、社民党の福島瑞穂さんが小泉さんと対談して、それぞれの立場で頑張りましょう、とおっしゃったわけです。

 

川内さん2-1.jpg

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高橋

結論が同じであれば、尊重するということですね。村田さんはいかがですか。

 

村田

私は2004年に、当時の小泉首相と各党党首あるいはオピニオンリーダーに、日本の命運を左右するのは電力会社であるという警告を発しています。小泉元首相には首相在職中を含め15年余にわたり発信を続けて参りました。私のこうした活動は完全に無駄ではなかった、と喜んでいます。原発をやめなければいけない、という小泉氏の判断は真摯なものだと確信しています。こうした結論には感性が必要だと思います。余分な知性であれこれできない理由を述べるのではなく、これは駄目なんだ、という感性が大事です。議論などはいらないのです。

 

 

■オリンピックと放射能

 

高橋

村田さんは、オリンピックを日本で開催することについて、当初から大変問題視されて、積極的な発言されていますね。

 

村田村田さん2-2.jpg

多くの選手を迎えるにあたって、放射能は非常に重要な問題です。4号機問題という世界の安全保障を脅かす状況を抱えながら、誘致するなど無責任で不道徳であると当初から強く反対してきました。ですが私はプラス思考ですから、決まった以上、事故処理をしっかりと国策化して、全面的に最大限の努力をするしかないという立場をとっています。ところが、この立場をますます強調しなければいけなくなったのは東京都知事の問題です。国際的に見てとんでもないイメージの失墜です。これを乗り越えるため早急に事故処理を国策化し全力投球で取り組まなければ、東京オリンピックはあり得ないと思っています。

 

高橋

村田さんの、早急に国策化しなければならないというお立場とは裏腹に、このイベントが国民に嫌なことを忘れさせる機能として働くと、むしろ、国策化が遠のいていくように思いますが、川内さんはどのように考えますか。

 

川内

思いは村田さんと同じです。福島第一原発の解決なくして、オリンピックはないということです。オリンピックを政治的に利用して、国民に忘れさせようとするようなことは、これまでも、これからもたくさんあると思いますが、オリンピックを本当にやるのであれば、事故処理の国策化は不可避だと思います。

 

 

 

■子ども・被災者支援法

 

高橋

オリンピック招致の時期と重なる頃、『子ども・被災者支援法』の具体的な中身である「基本方針」が、ほとんど議論されないまま政府によって決められました。今回の「基本方針」の実態は、満場一致で可決された支援法の精神とは、すっかりかけ離れたものとなりました。これをどのように解釈し、今後、私たちは子どもたちのために、どのような運動を継続しなければなりませんか。

 

川内

話し込む川内さんと村田さん.jpg

『子ども・被災者支援法』を2012年に作るとき、私は与党のワーキンググループの座長を務めていました。その骨子は、移住をしいたと言う方にはその支援をしましょう、また、将来に放射能の影響で癌が出てきたときに、因果関係を自分で証明することはできないので医療費については国が全部負担する、というものです。これを具体的にやるために政府は「基本方針」を作る、と支援法に書いてあります。今回、その支援法の通りに自民党政権は、ぜんぜん、やっていない、というのが今の問題です。この状況を変えていくには、内閣を変えるしかないと思います。

 

 

高橋

確かに政権が変わらなければ、何も変わらないというのが真実です。しかし国に期待できないその間、市民として、大人として、何もできないということにならない。チェルノブイリは繰り返せないわけです。村田さん、世界には子どもを守っていこうという文脈があります。こうした放射能と日本の子どもたちという問題に、世界の良心はどのようなまなざしを向けているのでしょうか。

 

 

村田さん2-3.jpg村田

世界も日本の子どもたちを心配して好意的な動きがあります。たとえば、ヘレン・カルディコット財団の理事長は何度も日本に来て、子どもたちを集団移住させなければいけないと言っています。他にも、スイスやハワイに子どもたちをしばらく保養させるというプロジェクトもあります。関係者から数日前にメールが入りまして、アメリカのサンディエゴのあたりで、米軍の「トモダチ作戦」で被害を受けた人たちが7万人いるとありました。その内、100人が原告となって訴訟しているようです。

 

高橋

あの短期間の間に、米軍が7万人も被害を受けたというのならば、日本の被害は計り知れないですね。

 

村田

 ヨウ素剤も飲まず甲板で作業をしていた兵士は、風の流れで放射性プルーム(大量の放射能が煙のように大気に乗って流れていく現象)にやられたなどという主張のようです。その人たちのカルテも処分されているとメールには書いてありました。

 

高橋

米軍はアリゾナの原爆実験の時から、兵士に多大な放射能被害を出し、それをすべて隠ぺいしてきましたからね。これは、相当な被害が出るのでしょうか。

  

川内

それは、出ると思いますね。福島県民健康調査ですでに26名の甲状腺癌の子どもたち、32名の強い疑いの子どもが発表されています。疫学的(統計的には)には、通常の環境では100万人に数名の子どもが甲状腺癌になる可能性があると言われています。ですから、この数値は驚くべきものです。チェルノブイリの経験(5年後くらいから顕在化)では、この数値はこれからさらに増えるでしょうし、甲状腺に限らずさまざまな健康被害が現れてくるでしょう。しかし、水俣病と同じように、政府も、加害企業も、どうにも逃げられなくなるまで、この異常な事態の放射能との相関性や因果関係を絶対に認めないでしょう。これは、国にとって不幸なことです。

 

高橋

まさしく、自民党も満場一致で賛成した『子ども・被災者支援法』に決められている、将来に放射能の影響で癌が出てきたときに、因果関係を自分で証明することはできないので医療費については国が全部負担する、ということと、まったく逆行した流れになっています。

 

聞き入る川内さん.jpg

 

 

 

 

   

プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

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 トップ1日.jpg

 

 

対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF:  ★新春対談 第一部(2014.1.1).pdf
 

第一部2.jpg    


                          

■そもそも、なぜ原発に反対なのか

 

高橋

新年、明けましておめでとうございます。3.11からすでに1000日が過ぎ、あまりに多くのことがありました。ともすると、私たちはその細部に追われて、なぜ原発に反対するのかその原点すら忘れそうです。

新年を迎えるにあたり、今日はお二人にあらためて、なぜ反対することを決意されたのか、お伺いします。はじめに、外務省にお勤めされ国連局審議官、駐セネガル大使、衆議院渉外部長、そして駐スイス大使として、日本の外交で大変ご活躍されてきた、村田光平さんからお願いします。

 

村田さん.jpg村田

明けましておめでとうございます。実は私は早くから原発に反対しています。1999年に外務省を退職した後に、浜岡原発の全国署名運動の先駆けとなる有識者声明に参加しました。当時、スリーマイル事故以来、二十数年にわたって諸外国は原発を製造することをやめていました。ところが日本だけはそれから22基も作っているという異常な状況に、危険性の認識について日本は世界からずれていると思ったのです。

 

高橋

東電関係者以外では初めて福島第一原発の一号機に、被ばく覚悟で建屋内部に入られ、原発爆発の原因は地震ではないかと示唆された、前衆議院議員、川内博史さんはどうですか。

 

川内 川内さん.jpg                    

明けましておめでとうございます。しかし、そう口にしながらも私は胸が痛みます。それはいまだに14万人もの福島県の人たちが避難先でこのお正月を迎えざるを得ない、さらに放射能の影響としか思えないような甲状腺がんが、子どもたちに多数出てきているからです。それにもかかわらず、原発を動かす、新設するなどはあり得ないことです。

 

参考:避難者調査

福島県内90,384人(昨年12.12現在)、福島県外49,554人(昨年11.14現在)

 

高橋

福島県は、震災当時「直接死」で亡くなられた方を1,603人とし、その後避難先などの「関連死」で亡くなった方を1,604人と発表(昨年12月19日)しています。「関連死」は驚くべき数値で、津波や地震で亡くなった方をわずかながらも超えてしまいました。この内訳を丁寧に分析されるべきだと考えています。

さて、私たちは経済成長のために電力を必要とし、科学を信じて原発を容認してきた歴史があります。今回の事故はとても古いタイプの原発なので仕方なかった、さらに改良したものがあるし、あるいはもっと優れたものを開発すべきだという意見があります。こうした近代主義からの科学論についてはどう思いますか。

→facebookここまで

 

川内さん②.jpg川内

あの事故は「古いタイプの原発だから事故が起きた」と言うのであれば、事故原因を明らかにしてくださいと言いたい。原因をあいまいにしながら、古いタイプが原因だ、というのは理屈が成り立っていないのです。推進派の人たちは大変頭がいいのでしょうか、彼らの作る分厚い資料は、「○○だと・思・う」というような、責任回避がいつでもできるような表現が使われ、事実関係を断定する表現は一切ありません。ですから彼らは、同じように新しい原発でも、安全などけっして断定などしないのです。ところが、どんな原発であろうが、放射能自体はそもそも無害化できないのです。

 

村田

その通りだと思います。ドイツを代表する学術研究機関、マックス・プランク原子力研究所の元所長のハンス = ペーター・デュール博士は、「人間社会が受容できない危険を持つ科学技術は、事故の可能性が完全にゼロでなければ忘れ去るべきである」と言っています。放射能被害をもたらす原発はこれに当てはまります。ですから、そもそも原発の「安全性を高める」などと言う議論自体、はじめから意味をなさないのです。福島の事故は、そのことを立証しました。人間社会が受け入れがたい原発事故は放射能を放出する、それは一人の人間のすべてを奪い去るものであると。なぜ、人類は原子力から決別しないのか、それは真の指導者がいないからです。知性だけではだめです、感性と思いやりが新しい指導者には求められます。

 

 

■安全保障と原発

 

高橋

安倍政権が唱える「積極的平和主義」では、集団的自衛権の行使を重視しています。軍事同盟国アメリカとより連携を強めて安全保障を高める、ということがその目的だとしています。しかしそれ以前に、原発は攻撃される対象としてとても危険な気がしますが、その点についてはどうでしょうか。

 

村田

私は、原発は日本の安全保障上の重要な問題だと、3.11以前から指摘してきました。そして、福島の事故は、それを立証したと思います。いかなる核兵器よりも恐ろしい、超巨大核兵器そのものであるということです。そうではあれば、4号機問題(大量の使用済核燃料が不安定な状態に置かれている)は、もっとも窮迫した世界の安全保障問題であるわけです。にもかかわらず、従来型の安全保障論をやっているのは不可解です。

 

川内

原発の安全保障における脆弱性というのは決定的なものです。政治の分野では、これについては誰も言わない。なぜなら、テロや軍事行動からその脆弱性を回避する方法が、まったくないからです。この議論を始めると、原発がそこにあることが、そもそも不都合な事実になってしまいます。今回の原子力規制委員会による「新安全基準」には、そうしたものはまったくありません。

 

村田村田さん②.jpg

今回の「新安全基準」では、敷地外のことについてはまったく触れていません。敷地の外には送受電網が膨大にあります。この中には、原発停止時の電力の受電ラインも含まれ、テロがこれを攻撃したならば、原発はたちまち外部電源を失いメルトダウンにつながります。そうかと言って、それらを防衛する範囲はあまりに広大になります。川内さんがおっしゃる通り、これに対処すべき方法はないのです。

 

高橋

原子力規制委員会のWebページには、委員長が報道関係者と会話する議事録が全部残っているのですが、それを見ると、委員長は私のできることは全部やっている、と言わんばかりです。「東日本の津波が来たら、健全性は保てるかと言われると、よく分からない。そういうことがないように願っていますけれども、余り難しいことを聞かないでください。朝から疲れています」(昨年10月30日、記者会見)と、かなりお疲れのようです。これ以上は勘弁してほしい、という感じですね。

 

村田

敷地内のことでも、彼らが十分な役割を果たしているとは思えません。安全が保証されていない中で、大飯原発を稼働させる規制委員会は、完全にその威信は失墜しましたね。

 

高橋

集団自衛権の観点から、アメリカは日本をどう見ていると思いますか。

 

村田

アメリカは、福島事故で脆弱性を露呈した原発を100基以上も抱えた現状に震え上がっていると思っています。簡単には戦争などできない。本当に戦争などをしてしまったら、その反撃でテロによって攻撃されることは現実的脅威です。日本も同様に脆弱ですが、集団的自衛権により日本がアメリカと行動を共にして戦争などに巻き込まれたら、テロ対象国となり、簡単にやられてしまいます。これだけ脆弱ならば、その防衛ができない。しかも、あふれ出る放射能のリスクは日本にとどまらない。このことが、3.11で世界的に周知されたわけです。集団的自衛権については、この一点をもって私は反対ですね。

 

川内

その論点は、国民の皆さんにきちんと理解してほしいですね。アメリカは先制的自衛権(防衛のために先制攻撃する権利)を行使すると言い放ち、中東などで実際にこれを行使してきた国です。ですから、日本が集団的自衛権で一緒に行動すると、日本が反撃されるわけです。

 

高橋

北朝鮮や中国に限定した安全保障に限らず、地球の裏側まで行動を共にすると、9.11のようなことが、日本の原発で起きる可能性があるわけですね。

 

川内

ドラマ『半沢直樹』ではないですが、100倍返しされるわけです。参ります。(一同、笑)

 

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■使用済み核燃料の問題

 

高橋

原子炉の核燃料は、使用・前・核燃料よりも使用・済・核燃料こそが、放射能そのものとなります。人間が近づくと10秒程度で死に至るという放射線量を放ちます。私は東電と直接電話で話したところ、「1時間あたり、数千シーベルト・以・上・になる」と回答がありました。「以上」と言ったのは、単位が千ではなく万になることもあるかと問うと、「あります」とはっきり答えたのです。現在、全国に17,000トン以上あります。使用済核燃料は原発そのものの問題からある意味独立していて、原発に反対しようが賛成しようが、あるいは原発がなくなったとしても、避けて通れない巨大な問題として存在し続けます。1000年経った遺跡は立派なものですが、これは10万年経っても、放射能を放つ悪魔の遺跡として地球上に大量に残るわけです。私は、目の前にある事故収束も当面きわめて大事ですが、これはより大きな問題だと考えています。

 

川内

最終処分方法は誰にも分からないのです。推進派も、将来何とかします、という状態です。それが分かっていながら、なぜ、また再稼働するのかを、どうしても最初に言いたいです。

 

村田

4号機の問題で、使用済核燃料が注目されてきました。これをうまく取り出したところで、また、大型共同プールに移すのでは安全ではありません。費用の制約からそれができない。本来、直接乾式キャスクに移すべきなのに、ここに『事故処理の国策化』がなされていないことの問題が象徴されております。

 

 参考:乾式キャスク(dry cask)

使用済み核燃料をプールに貯蔵するよりは、冷却水の電源喪失でメルトダウンを起こさないため、優れた貯蔵方法と言われる。内部では不活性気体でおおわれる。ただし、プールと比べてコストが高い。

 

高橋

日本学術会議は、「暫定保管」というモラトリアム期間の設定を提唱しています。これは、いきなり最終処分に向かうのではなく、問題の適切な対処方策確立のために、数十年から数百年程度は、いったん乾式キャスクなどに貯蔵しようというものです。この期間を利用して、容器の耐久性の向上や放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の半減期の短縮技術(核変換技術)などの科学技術発展に期待したいようです。

 

参考:日本学術会議

「高レベル放射性廃棄物の処分について」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf 

 

川内

暫定的ではあるが、今、考えうる、もっとも安全な措置を、きちんと国策として行うべきですね。それが、乾式キャスクなら、それをやるべきです。ただし、このような対応をするには、東京電力の体制・経営の問題をどうするのか、国として答えを出す必要があります。崩壊したきわめて危険な福島原発を、「発電所だから」という理由だけで一民間企業に任せるのではなく、国が管理すべきなのです。そして、実態はすでに破たんしている東電を、きちんと処理して、その後の体制を作り国策とすべきです。使用済核燃料の問題も、その延長で国策として初めて考えることができます。

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プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

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再処理などできない、地層処分もできない

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●六ヶ所再処理工場に貯蔵している使用済燃料が、搬出元の発電所に返送されるとした場合に、いくつかの(原子力)発電所において使用済燃料プールの管理容量を超過し、順次、発電所の運転を停止せざるを得なくなる------内閣府原子力委員会、2012年。

 

六ヶ所再処理工場が『事業困難』になったとき、容量を超えて運ばれた3362トン(容量3000トン)は、搬出元の原発に返すことが青森県と取決められています。挿絵の横棒グラフは、使用済核燃料が各原発に返された時の、運転可能期間を示します。たとえば福島や九州の玄海は、プールが満杯になって運転不能になります。

 

全国の原発54基の保管プールには、使用済核燃料が現在14200トンあります。六ヶ所の分と合わせると17000トン(2万5千体相当)を超えます。肝心な六ヶ所再処理工場は相次ぐトラブルのために、先月29日、20回目の完成延期を発表しました。現状では、六ヶ所は事実上、共同貯蔵施設となっています。

 

『再処理』とは何でしょうか。海外の原発は、使用済核燃料は10万年などをめどに、そのまま地中深く保管することになっています(ワンスルー方式)。日本ではこれを『再処理』し、もう一度燃料として使う『核燃料サイクル』を計画しています。独自技術がないので、フランス製の再処理施設を購入し、1971年から東海村に、1993年から六ヶ所村にと作りました。六ヶ所ではすでに「4兆円近くのコストオバーが生じています」(慶応大学 金子勝教授)。

 

大量の使用済核燃料は、ここで延々と待機しているのです。

 

こうした中、先月28日、経済産業省は使用済核燃料からでる高レベル放射性廃棄物(数千シーベルト/h)を、10万年管理する『地層処分』について、課題や実現性を「白紙状態」から議論する作業部会を、14年ぶりにスタートさせました。専門家からは、「地震学では10万年先のことは全く分からない」などと地層処分に否定的な意見が相次ぎました。私たちはさらに、「白紙」と言うのならば核燃料サイクルから議論すべきだ、と主張します。

 

再稼働させ、さらに使用済核燃料を増やすべきではありません。ところが東京電力は、六ヶ所は満杯だとして、5000トンの中間貯蔵施設(乾式貯蔵)を2010年から下北半島で建設し、事業開始を今年10月にするための申請を出しています。さらに今月11日、与党は政府に福島の対策とあわせて「中間貯蔵」建設への国費投入を提言しています。「中間貯蔵」の意味が問われます。

 

 

 

 

まだ増やすのか(正).jpg

 

 

 

関連記事

『原発問題の主人公は、使用済燃料』

http://www.kaze-to-hikari.com/2013/11/post-61.html

 

『人間に、できることなのか』(廃棄の難しさ)

http://www.kaze-to-hikari.com/2013/03/post-14.html

 

『4号機プール、広島型原爆の1万4000発分くらい』

http://www.kaze-to-hikari.com/2013/11/414000.html

 

『4号機、燃料棒の取り出し、大丈夫か』

http://www.kaze-to-hikari.com/2013/11/post-60.html

 

 

関連資料

原子力委員会『核燃料サイクル政策の選択肢に関する検討』2012.3.1 (P169)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo22/siryo1-2.pdf

 

経済産業省『地層処分技術ワーキンググループ(第1回)』2013年10月28日開催

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/genshiryoku/chisou_shobun_wg/001_haifu.html

 

原子力委員会『使用済燃料管理について』(東京電力の乾式貯蔵増設)2012.2.23

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/hatukaku/siryo/siryo8/siryo3-2.pdf

 

 

増設(正).jpg

 

リサイクル燃料貯蔵株式会社:http://www.rfsco.co.jp/company/access.html

 

 
 

日本原燃『六ヶ所再処理工場の現状と今後の見通しについて』2011.2.21

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei4/siryo2-2.pdf

 

 

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原発問題の主人公は、使用済燃料

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「4号機の使用済燃料を取り出した後は、どうするのですか」というご質問がありました。答えは「どうすることもできない」です。

 

4号機プールに入っている燃料集合体は、1533体あり、そのうち使用済燃料が1331体です。普通「使用済み」という表現に、放射能が低くやや安全なのかという印象を抱きます。しかし、実際はその逆で、「使用済み」こそが危険であり、原発問題の核心部です。

 

京都大学原子炉実験所の小出先生は「ウランを核分裂させると核分裂生成物というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな【放射性物質】の集合体です。セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131というようなものが混然一体となって含まれています。100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます」とおしゃっています。原子炉が事故を起こすと、これがあふれ出ます。原発事故という悪夢は、この放射能が主人公なのです。

 

4号機のプールには、広島型原爆の1万4000発分くらいの核分裂生成物があります。小出先生は「(原子炉から出して)数年たてば、セシウム137やストロンチウム90の放射能が主成分となり、その時点で言えば、新燃料の数十万倍の放射能です」と、この原稿のためにコメントされました。

 

「使用済燃料」棒の集合体ではなく、【放射性物質集合体】なのです。

 

使用済燃料の放射能は、「人が近づくと十数秒で致死量になる」(NHK水野倫之解説委員)と言うほど強いものです。東京電力は「原子炉から取り出した直後の使用済燃料の表面線量は、数千シーベルト/時間、以上」と電話で回答しています。これが、電力と引き換えに私たちが得たものです。

 

全国の原発と六ヶ所再処理工場には、この「使用済燃料」が約17000トンあります。次回は、このことをお伝えします。

 

 

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『4号機プール、広島型原爆の1万4000発分くらい』

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『4号機、燃料棒の取り出し、大丈夫か』

http://www.kaze-to-hikari.com/2013/11/post-60.html

 

 

関連資料

経済産業省『総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループ(第1回)‐配布資料』2013.7.5

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigyou/houshasei_haikibutsu/pdf/25_03_02_00.pdf

 

 

 

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4号機プール、広島型原爆の1万4000発分くらい

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京都大学原子炉実験所の小出先生は、プール内で燃料集合体を落下させるリストとその危険性についてご指摘されています。なお、東京電力はワイヤーを二重にすることで、このリスクを回避しようとしています。

 

■小出先生

(現在もっとも心配することは、)使用済み燃料プールを支えている下の階の壁も、床の一部も、損傷してなくなっていて、半分宙吊りのようになっていますから、このプール自身を支えることが危うい状態になっていることです。大きな余震がきて、このプールがガタッと崩れ、1331体すべての使用済み燃料が熔解することが、一番心配です。1、2、3号機は、まがりなりにも原子炉の中で起こったのですが、4号機のプールが崩れれば、そのまま空気中に恐ろしいほどの放射能を噴き出すでしょう。広島型原爆の1万4000発分くらいの核分裂生成物が、その底にたまっています。

 

作業は燃料取扱機を使って、水の中で燃料ラックから燃料集合体を取り出します。もし、何かあるとすると、この過程でうまくキャスクに入れられないで、水の中で燃料集合体を落下させてしまうというのが考えられます。その衝撃で(中の燃料棒が)折れるようなことがあれば、放射性物質は噴き出してくるわけです。すると、プールが放射能で汚れてしまう。一部の気体状の放射性物質は水面から外にも噴き出します。その時に作業員が被ばくするでしょう。逃げたところでプールの水は汚れているので、その水を浄化しなければならない。今、プールの水は循環しているので、その途中で除染するということもできるでしょうけれども、そのために何カ月も作業は停止するわけです。

 

(落下、破損で)燃料棒を包んでいるジルコニウムは、すぐには自然発火しません。温度が850~900℃くらいになると燃えます。これは「ジルコニウム水反応」といいます。水とジルコニウムが酸化反応して水素を出すのですが、それが発熱反応なのです。一度反応すると熱が出て温度が上がる、温度が上がるとますます反応する。すると水素が出て、また温度が上がる、そしてまた反応する。この反応が一気にダーッと進んでしまいます。これがたとえば外部の空気中だとすると、空気には水分があります。ですから、それと反応するわけです

(KAZE:燃料集合体が冷却水の外部で空気触れる可能性は、キャスクが32mから落下し、東京電力の予想以上に破損したときに考えられます)

 

(キャスクを落下させることは)あるかもしれないけど....。事故以前に取出し作業をやっていたときは、ちゃんとした建屋の中に、ちゃんとしたクレーンがあって、そういう状態でやっているわけですけども、今は、応急の建物を作り、応急のクレーンを用意しているわけですから、本当に今まで通りの作業ができるのかどうかは私にはよく分かりません。

 

 

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写真1.jpg高橋

あまりにひどい汚染水問題に気を取られて、この間、少し4号機の問題を忘れていました。4号機でもっとも心配することは何ですか。

 

小出先生

4号機の建屋は爆発して大きな損傷を受けています。使用済み燃料プールを支えている下の階の壁も、床の一部も、損傷してなくなっている。半分宙吊りのようになっていますから、このプール自身を支えることが危うい状態になっているわけです。大きな余震がきて、このプールがガタッと崩れ、1331体すべての使用済み燃料が熔解することが、一番心配です。1、2、3号機は、まがりなりにも原子炉の中で起こったのですが、4号機のプールが崩れれば、そのまま空気中に恐ろしいほどの放射能を噴き出すでしょう。

 

高橋

一刻も早く、しかも安全に、使用済み燃料プールからの燃料取り出しが行われることを、切に願います。ところで、アーニー・ガンダーセンさんが燃料棒を包んでいるジルコニウムは、あやまって空気にふれると自然発火すると言っています。

 

小出先生

すぐには自然発火しません。温度が850~900℃くらいになると燃えます。これは「ジルコニウム水反応」といいます。水とジルコニウムが酸化反応して水素を出すのですが、それが発熱反応なのです。一度反応すると熱が出て温度が上がる、温度が上がるとますます反応する。すると水素が出て、また温度が上がる、そしてまた反応する。この反応が一気にダーッと進んでしまいます。

 

高橋

一気にですか、じっくりじゃないのですか?

 

小出先生写真2.jpg

じっくりではありません。1、2、3号機ではこの燃料が原子炉の中にあって、そうしたことが起きました。冷却に失敗して、もともとは300℃くらいの冷却水があったのだけども、それがぬけてしまって、冷却できなくなった燃料の温度が崩壊熱でどんどん上がってきたわけです。400℃になって、500℃になって、800℃、900℃くらいになると、ジルコニウムが反応をはじめてそこがまた熱を出してくる。で、どんどん温度が上がって、また水素が出てくる。

 

高橋

それで水素爆発したのですか。

 

小出先生

そうです、それで水素爆発したのです。これがたとえば外部の空気中だとすると、空気には水分があります。ですから、それと反応するわけです。

 

高橋

空気中のわずかな水分で反応するのですか?

 

小出先生

もちろんです。目には見えないけれども、空気中には水分が必ずあります。ジルコニウムという金属の温度が上がってしまえば、かならず反応します。さて、4号機の使用済み燃料プールには、現在、1331体の使用済み燃料集合体があるわけですが(新燃料202体、合計1533体)、その中には大量の放射性物質が入っている。100万kwの原子力発電所なら1年運転すると、広島型原爆の1000発分の核分裂生成物をつくります。今、4号機の使用済み燃料プールの底にある1331体の使用済み燃料をあわせると、広島型原爆の1万4000発分くらいの核分裂生成物が、その底にたまっているわけです。

 

高橋

恐ろしい数字ですね。現在は4号機の使用済み燃料は水で冷却されていますが、崩壊熱自体はどの程度あるとお考えですか。

 

崩壊熱.jpg小出先生

事故から2年半経って、崩壊熱自身はずいぶん減っているし、使用済み燃料プールにある燃料の中には、事故発生よりずっと以前のモノも含まれていますので、さらに崩壊熱はかなり減っていると思われます。ですから、グラフにある2号機、3号機と書いてあるのと同じくらいだと思います。これを水を循環させることで30℃くらいに収めています。しかし、この冷却装置が壊れてしまったらどんどん温度が上がって、最後はやられてしまいます。

 

 

 

 

 

 

 表題2(正)2.jpg

 

高橋

取り出し作業でのリスクは何ですか。

 

小出先生

プールの中の燃料を水の上に出すと強烈な放射線が空中に飛散しますので、これは、はじめからできないわけです。ですから作業は燃料取扱機を使って、水の中で燃料ラックから燃料集合体を取り出します。それを水の中でキャスクに入れます。もし、何かあるとすると、この過程でうまくキャスクに入れられないで、水の中で燃料集合体を落下させてしまうというのが考えられます。

 

高橋

そうするとどうなりますか?

 

小出先生

4mもある長い燃料集合体は物理的に破壊されると思います。燃料集合体を構成するひとつひとつのジルコニウムのパイプは、直径1cm、長さ4mという細い長い物干し竿のようなものですが、その中に燃料ペレットが入っていて、「死の灰」がそこにたくさん溜まっているわけですね。このパイプの中にまがりなりにも、放射性物質が封じ込められているから出てこない。でも、燃料集合体が落下するとその衝撃でこのパイプが折れるようなことがあれば、放射性物質は噴き出してくるわけです。すると、プールが放射能で汚れてしまう。一部の気体状の放射性物質は水面から外にも噴き出します。

 

   作業手順.jpg

  

高橋

プールの水が、汚染水になるわけですね。

 

小出先生

そうですね。すると、その時に作業員が被ばくするでしょう。そして、まずは逃げないといけない。逃げたところでプールの水は汚れているので、その水を浄化しなければならない。今、プールの水は循環しているので、その途中で除染するということもできるでしょうけれども、そのために何カ月も作業は停止するわけです。1331体これをやらなければならない。その内、1体でも落とすと大変なことになります。

 

高橋

確かに、プールの中での作業はカメラやセンサーで遠隔操作されますが、クレーンの操作などは建物の中で人がやるとのことですから心配ですね。さて、キャスクにうまく入れられた後に、キャスクごと落とすことは考えられないですか。

 

小出先生

あるかもしれないけど....。事故以前に取出し作業をやっていたときは、ちゃんとした建屋の中に、ちゃんとしたクレーンがあって、そういう状態でやっているわけですけども、今は、応急の建物を作り、応急のクレーンを用意しているわけですから、本当に今まで通りの作業ができるのかどうかは私にはよく分かりません。

 

写真3.jpg

 

 

 

■補足資料

  

①追加された二重のワイヤー 

東京電力『4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しについて』2013.10.30

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/series/images/131030_01.pdf

 

二重ワイヤー.jpg

 

 

 

②プールの強度に関する、東京電力の新たな説明

東京電力「4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しについて」2013.10.30

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/series/images/131030_01.pdf

プール強度.jpg

 

過去の資料

東京電力「使用済燃料プールから取り出した燃料集合体他の長期健全性評価」2013.4/ PDFの5ページ

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/d130412_01-j.pdf

 

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③燃料の形態「燃料集合体」とは

原子力発電所の燃料となるウランは、二酸化ウランに焼き固められて、ペレットに加工されます。このべレットを、ジルコニウム合金という金属でつくられたパイプに入れます。これを燃料棒といいます。直径1cm、長さ4mほどの長いもので、小出先生は「細い長い物干し竿のようなもの」と表現されています。

 

燃料棒の構造.jpg


さらに、燃料棒を束ね、燃料集合体をつくります。燃料集合体の構造や大きさは、沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)とで異なります。4号機は沸騰水型炉で、9×9=81本の燃料棒が燃料集合体といて収められています。一般に、「燃料棒」というときに、この燃料集合体のことを簡略化していいますが、正確には燃料集合体です。4号機のプールには、この燃料集合体が1533体あり、うち使用済み燃料を収めたものが1331体あります。

 

 集合体.jpg

  

 

 

 

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4号機、燃料棒の取り出し、大丈夫か

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4号機、燃料棒の取り出し、大丈夫か

 

東京電力は4号機の使用済み核燃料プールに保管している1533体の燃料取り出しを11月半ばからはじめ、1年後の来年末には終える予定です。

 

作業は、プールの中にある燃料ラックから燃料集合体を引き抜き、水中に沈めた『キャスク』という輸送容器に1体ずつ格納します。ひとつのキャスクに22体を入れ、これを外部の共有プールに移す一通りの作業には7~10日かかります。

 

プールの中の大きなガレキは、すでに取り除かれていますが、まだ5cm未満の小さなものが残っています。燃料集合体とラックの隙間は、わずか1.3cmなので、この隙間にガレキが入っていると、引き抜くときに引っ掛かり、燃料棒を破損させる可能性があります。このために、東京電力は1秒間に1cm引き抜くという操作を行います。当初、比較的安全な「新燃料」から取り出し、「その経験を踏まえ使用済燃料を取り出す」としています。使用済み燃料は大量の放射性物質を含んでいますので、破損するとこれが漏れます。

 

また搬出のとき、地震などでキャスクを落とす懸念があります。キャスクは9mの高さから落下しても、漏れを基準以内に抑えるよう設計・製造されていますが、プールのあるフロアは高さ32mもあります。

 

今年3月に原子力規制委員会は、万が一、キャスクが落下し破損したら、臨界(核分裂の連鎖反応)に至らないかという質問をしています。これに対し東京電力は、キャスク内部に中性子吸収材があり、「燃料が底部に蓄積しても臨界になることはない」と回答しています。ただし、フタの部分が破損すると、放射性物質が漏れたりする可能性は認め、「その影響は限定的である」とも言っています。これは、過去の17m落下実験のデータを、32mへ換算計算した結論です。

 

東京電力は「燃料の取出しという作業自体は、震災前からどの発電所でも行っている通常の作業です」としていますが、規制委員会の田中委員長は「来年中に終わると(東京電力は)言っているけれども、そんなにうまくいくかどうかはよく分かりません」と、10月30日の記者会見で無責任な発言をしました。

 

4号機プールからは一刻も早く燃料を取り出すことが必要です。その作業リスクは色々検討されてきたようです。しかし、安全性は本当に大丈夫でしょうか。

 

 

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三つのこと.jpg

 

【資料①】東京電力→原子力規制委員会

「4号機使用済燃料プール等からの使用済燃料取り出しに係る安全性についてのコメントへの回答」2013.3.29

https://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/data/0007_03.pdf

 

 

 

腐食リスク.jpg

事故当時に冷却のために海水を注入したので、この塩分で燃料集合体が腐食していないか心配されました。このため、2012年7月18、19日に2本の燃料集合体を抜き出して、検査したところ問題がないことが分かっています【資料②】。また、プール内の海水混入も、塩分の除去は2012年10月12日に完了しています【資料③】。

 

【資料②】東京電力「使用済燃料プールから取り出した燃料集合体他の長期健全性評価」2013.4/ PDFの5ページ

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/d130412_01-j.pdf

 

 

【資料③】東京電力「4号機使用済燃料プールの塩分除去作業完了について」2012.10.22/PDFの31ページ

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/m121022_05-j.pdf

 

 

 

 

燃料損傷リスク.jpg建屋上部の建屋ガレキは、2011.11.26~2012.7.11の9か月間ですべて撤去されました【資料④】。

 

もっとも重要なのは、使用済み燃料プール内部のガレキです。これは、燃料集合体を取り出すときにガレキが障害となるからです。今年の8月から始めたガレキ撤去は、20台以上の専用に設計された、機器を移動したりガレキを撤去したりする器具によって現在も行われています。はじめに大型のガレキ(15cm以上)をすべて取り除き、その後中型ガレキ(15~5cm)を7割がた撤去しました【資料⑤】。

 

問題となるのは、5cm以下のガレキです。燃料集合体は燃料ラックに入っていますが、その隙間は1.3cmあり、この中に小さなガレキが落ちていることが推測され、引き出すときにこれが引っ掛かります。このために、引き出しは1秒間に1cmという速度でおこなわれ、燃料集合体は250Kgありますが、センサーがそれ以上の重さを感じたときには自動的に停止します。こうした時間をかけるために、ひとつの燃料集合体を引き出しから大型プールに収納するまで7~10日掛かるわけです。

 

 

【資料④】東京電力「4号機「原子炉建屋」および「使用済燃料プール」の健全性について」2012.8.30

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_120830_02-j.pdf

 

【資料⑤】東京電力「使用済燃料プール内のガレキ撤去および炉内機器の移動作業開始について」2013.8.26

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130826_02-j.pdf

  

 

 

落下リスク.jpg

プールのあるオペレーティングフロア(約32m)から、燃料を装填し終えたキャスクをクレーンで吊り上げて、下部のトレーラーエリアに降ろします。この際に、誤ってキャスクを落下させてしまったら、中が使用済み燃料ならば、水が漏れてさらに希ガス、よう素など放射性物質が漏れるリスクがあります。

 

キャスクはもともと9mの高さから落下しても、漏洩を基準以内に抑えるよう設計・製造されています。特にキャスク上部のフタが外れるかどうかがポイントとなります。過去に、17mの高さからコンクリート床に落下試験を実施したことがあります。この時は、フタは外れず、フタから内部のガスの漏洩は生じたものの、内圧が低下する程ではなかった、という報告があります。

 

しかし、東京電力は「32mの落下により、キャスクのフタからの漏洩、キャスク内部の燃料破損が生じる可能性がある」としながらも、「敷地境界における線量は、約1.7×10-3mSv程度であり、従来の設置許可における燃料体落下事故の評価より1桁小さく、その影響は限定的である」と結論付けています。

 

また規制委員会が、キャスク落下のときに「使用済燃料の破損物が、キャスク底部に蓄積したとしても臨界には至らないか」と質問していますが、これに対し東京電力は、キャスク内部に中性子吸収材があり、「ペレット(燃料)が放出されて底部に蓄積しても現実的には臨界になることはない」と回答しています。さらに「キャスク表面温度を監視しつつ、高温(85℃以上)になる場合には、放水等により外部からの冷却を行う」としています。【資料①】

 

さらに29日、「キャスクが落下したことで再臨界しキセノンが発生した」と想定し、5km圏内の住人に、避難警報を出す訓練が行われました。(福島テレビ)

http://www.youtube.com/watch?v=rh7_ZTVX7j8

http://www.youtube.com/watch?v=C0xf9vYPDo0
 

 

 落下時の想定.jpg

 

 

 

 基礎知識.jpg

 

【資料⑥】東京電力による動画解説「映像アーカイブ」3分42秒

http://www.tepco.co.jp/tepconews/library/movie-01j.html?bcpid=45149870002&bclid=27905668002&bctid=642061648002

 

【資料⑦】東京電力「4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しについて」2013.10.30

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/series/images/131030_01.pdf

 

①プール内部でのキャスクへの搬入手順

今回の4号機使用済み燃料プールからの燃料集合体の搬出は、完成した燃料取り出し用カバー内部で行われます。燃料は常に水によって冷却する必要があるし、水は放射線の遮断にも役に立ちます。ですから、取り出し作業は水のあるプールの中で行う必要があります。

 

安全に燃料を外部に持ち出すには、キャスクと呼ばれる輸送容器に収める必要があります。プールは二つに区切られていて、キャスクを縦に入れる部分と、燃料集合体が多数収められている燃料ラックがあります。このラックから、燃料取扱機で燃料集合体の上部フックを連結させて引き揚げ、キャスクに収めます。ひとつのキャスクに、燃料集合体22体を入れます。この際、燃料集合体を誤ってプール内部に落下させたならば、「燃料1体では再臨界しないことを確認している」と東京電力は言っています。

 

その後、この100トンを超えるキャスクをクレーンで持ち上げ、最終的には地上まで降ろし搬出します。プールの中の作業は、すべてカメラとセンサーを使った遠隔操作で行われますが、クレーンの操作などは人が行います。(NHK10月29日放送「NEWS WEB」では、すべてを遠隔操作で行い、現場には人がいないような印象を受ける放送がありましたが、それは間違いです)

 

こうした作業は、通常運転の際にいつも行われていることですが、今回は燃料取り出し用カバーという新しい設備を使うことになります。ひとつのキャスクを使って外部の大型プールに搬入するまで、およそ7~10日間を掛けます。これを、二つのキャスクを使い交互に繰り返します。また、実際の取り出しの前に訓練を行い、当初の実際の作業は習熟度を上げるために比較的安全な新燃料から行います。

 

作業手順.jpg

 

キャスクの概要(た).jpg  

 

 

②使用済み燃料と新燃料の違い

原子力発電所の事故で、もっとも問題とされるのは放射性物質の元である燃料の問題です。燃料は、一度も使っていない新燃料と、すでに発電のために使った使用済み燃料があります。特に危険なのは、この使用済み燃料です。

 

この点、京都大学原子炉実験所の小出先生は「ウランを核分裂させると核分裂生成物というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな放射性物質の集合体です。セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131というようなものが混然一体となって含まれています。100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます」とおしゃっています。また、次号のインタビューでも燃料棒の1533体のうち、特に使用済み燃料1331体を問題視して議論をしています。実際、東京電力も燃料取り出しは、先に新燃料から行い習熟度を上げてから使用済み燃料に取り掛かる予定です。

 

 

●燃料の形態「燃料集合体」とは燃料棒の構造.jpg

原子力発電所の燃料となるウランは、二酸化ウランに焼き固められて、ペレットに加工されます。このべレットを、ジルコニウム合金という金属でつくられたパイプに入れます。これを燃料棒といいます。直径1cm、長さ4mほどの長いもので、小出先生は「細い長い物干し竿のようなもの」と表現されています。

 さらに、燃料棒を束ね、燃料集合体をつくります。燃料集合体の構造や大きさは、沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)とで異なります。4号機は沸騰水型炉で、9×9=81本の燃料棒が燃料集合体として収められています。一般に、「燃料棒」というときに、この燃料集合体のことを簡略化していいますが、正確には燃料集合体です。4号機のプールには、この燃料集合体が1533体あり、うち使用済み燃料を収めたものが1331体あります。

 

燃料集合体とは.jpg

 

 

 

③鉄骨建方『燃料取り出しカバー』の建設

原発事故によって3号機から共通のダクトを通じて侵入した水素ガスが(東京電力の説明)、4号機に入り同機の建屋は爆発しました。これによって、上部にあるクレーン(燃料集合体を原子炉あるいはプールから引き上げる)などが吹き飛びました。また、建屋自体が激しい損傷し一部の壁や床が破壊で、新しいクレーン設置の荷重に耐えられなくなりました。

 

このために、4号機建屋の横に新たな構造物『燃料取り出しカバー』を建設することになり、2012年8月から工事が行われ、これが完成しました【資料③】。当初、取出し作業の開始は今年の12月をめどにしましたが、事態の深刻さから1カ月早まったわけです。なぜ深刻なのか、それは4号機のプール自体が予期せぬ地震で倒壊した場合、あるいはプールに冷却水を送る装置が壊れた場合に測り知れない事態となるからです。こうしたとき、燃料自体は常に『崩壊熱』を持っていますから、1、2、3号機で起きたメルトダウンのような熔解が、プールの外、あるいは中で起きることが懸念されます。ただし、東京電力はこの点について「全ての測定箇所で設計基準強度以上であることを確認した」と説明して、震度6強の耐震性があるとしています【資料⑨】。

 

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 カバーの裏側.jpg


【資料⑧】東京電力「4号機燃料取り出し用カバー設置工事の進捗状況について【天井クレーンの設置完了】」2013.9.25

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130925_04-j.pdf

 

【資料⑨】東京電力「4号機原子炉建屋の健全性確認のための定期点検結果(第5回目)について」2013.5.29

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130529_06-j.pdf

 

 

 

 

 

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私も冷却に金属を使うべきだと考えています

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立命館大学の山田先生は、水と一緒に鉛の粉末あるいは微小なボールを投入し、デブリを鉛でおおい尽そうと提案されています。小出先生、どう思いますか。

 

『崩壊熱』の冷却に水をこれ以上使うと放射能がどんどん外部に出ていくので、私も冷却に金属を使うべきだと考えています。問題は、デブリの位置です。一か所にまとまって固まっていると良いのですが、実際にはバラバラになって散らばっている可能性が高いと私は思います。

 

燃料は溶け出して、一度、液体になったものが圧力容器からダーッと流れ落ちたわけです。そのときは注水もされていたわけですから、いろいろなところからの水流があり、これが影響します。原子炉内部は猛烈な『動的環境』なのです。猛烈に流動しているのですから、デブリの一部は団子状態になっているかもしれないけれども、たぶんかなりの部分が水の中に分散にしてあちこちに流れたはずだと思います。私たちはそれをスラリーとかスラッジと呼んでいます。要するに泥水のようなものですね。そのような状態で、あちらこっちに流れていると思います。

 

山田さんは、現在、注水している圧力容器上部のパイプから、水とともに鉛の粉を流し込むと言われています。原理的には私もそれでいいと思います。ただ、原子炉の構造はそれほどシンプルではありません。配管は上に向かったり下に向かったりしていますし、途中にバルブ(弁)もあります。水を送るにはポンプが必要なわけですから、通常の水を流すポンプを使えば、ポンプは壊れます。流水で比重の高い鉛の粒を送るのも、流体力学上難しいかもしれません。

 

新しい配管は放射能が強いのでつくれませんから、今ある配管を何とか活用する必要があります。そして、どのような粉を、どの程度の流量で、どのようなポンプで送るべきかを、専門家が集まって検討する必要があります。そしてなによりも一番必要な人材は、福島のそれぞれの原発の細部の配管まで分かっている人たちです。

 

原理的には事故当初から、私もヨーロッパの方から金属による冷却を提案頂いていました。しかし、それはとてつもなく技術的に難しいことかもしれません。こんなことは、誰もやったことがないのです。

 

 

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小出先生インタビュー『崩壊熱』(後半)

 

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高橋

格納容器までメルトダウンした燃料、つまりデブリの『発熱量』はすでに200KWまで下がり、それは家庭用電気ストーブの200台分であることが分かりました。格納容器の構造について教えてください。

 

小出先生

もともと燃料があった圧力容器は、厚さ16cmある鋼鉄でできています。ところが、事故当時のデブリの『崩壊熱』が非常に高く、この16cmの鋼鉄を溶かし抜け落ちたのです。落ちたデブリは、東京電力は格納容器の中にあると言っています。格納容器の鋼鉄は厚さわずか3cmです。ただし、このフラスコのような形の格納容器の底部は、コンクリートの床張りがされて平らになっています。一番深い中心の厚さは260cmあります。その中心部分にはピットと呼ばれる小さな水槽が掘ってあります。さらに、格納容器全面を100cm以上のコンクリートでおおい、外部に放射線が飛び出ることを防いでいます。その底部は全体を支えるために760cmのコンクリートがあります。

 

(資料)

東京電力『1~3号機の炉心損傷状況の推定について』2011年11月30日

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_111130_07-j.pdf

 

 

高橋

この東京電力の資料では、デブリは格納容器の中で止まっていると、解析していますね。

 

小出先生

そうですね。図ではデブリは下部のコンクリートの床に70cmほど溶けて埋まっているように描かれています。しかし、東京電力自身が21ページの文章で「ドライウェル床面(ペデスタル外側)にも拡散」と書いているように、実際には格納容器のいろいろな部分にすでに拡散してしまっていると私は思います。

 

二人2 koide_26.jpg高橋

立命館大学の山田先生は、一定の水圧をかけた水とともに、鉛の粉末あるいは微小なボールを冷却水投入口から投入し、デブリを鉛でおおい尽そうと提案されています。非常にユニークなお考えで私たちも注目しています。

 

小出先生

そうですね。『崩壊熱』の冷却に水をこれ以上使うと放射能がどんどん外部に出ていくので、私も冷却に金属を使うべきだと考えています。山田さんの理論がうまくいくと、100トンのデブリに金属が溶けてどんどん蓄積し、200トンになり、300トンになります。結果、一定の『崩壊熱』を、量の多い金属で分散でき、外部への熱伝導も効果的になります。しかも、一方で『崩壊熱』は下がっていきますので、バランスは取れるでしょう。ところが問題は、デブリの位置なのですね。一か所にまとまって固まっていると良いのですが、実際にはバラバラになって散らばっている可能性が高いと私は思います。

  

 

  

見出し②.png

高橋

どうしてバラバラになるとお考えですか。

 

小出先生

燃料は溶け出して、一度、液体になったものが圧力容器からダーッと流れ落ちたわけです。そのときは注水もされていたわけですから、いろいろなところからの水流がありこれが影響します。後に、東京電力がファイバースコープ(カメラ)を入れて内部を見たら、一面水蒸気で充満していて上部からは滝のように水が流れていたと言っています。つまり、原子炉内部は猛烈な『動的環境』なのです。猛烈に流動しているのですから、デブリの一部は団子状態になっているかもしれないけれども、たぶんかなりの部分が水の中に分散にしてあちこちに流れたはずだと思います。私たちはそれをスラリーとかスラッジと呼んでいます。要するに泥水のようなものですね。そのような状態で、あちらこっちに流れていると思います。

 

高橋崩壊熱②ブログ用2.jpg

山田先生のアイディアは、デブリは下部にまとまっているのでそこに鉛の粒が沈殿する、そして一定量のデブリの『崩壊熱』は熱がたまりやすく、やがて高熱となり、鉛を溶かして全体をおおうことができる、こうした理論だと理解しています。

 

小出先生

確かに、デブリがまとまっていると『崩壊熱』が蓄積され温度が高くなりやすいです。しかし、前半でも言いましたように、熱というものは「与えられた熱」と「出ていく熱」の差分で決まりますので、小さなデブリでも「出ていく熱」が小さければ熱はたまり、再度デブリが熔けてしまう可能性もあります。いまは、投入した鉛などの金属がデブリにうまく到達できるかどうかがカギになりますので、仮に小さなデブリになっていたとしてもそこに鉛などを到達させることができるなら、鉛が熔けてデブリの冷却を容易にできるかもしれません。検討すべきことは、バラバラな状態になったデブリにどのように金属を到達させるかということです。

 

高橋

では、どのように金属をデブリに運んだらいいですか。

 

小出先生

山田さんは、現在、注水している圧力容器上部のパイプから、水とともに鉛の粉を流し込むと言われています。原理的には私もそれでいいと思うのですが、実は原子炉の構造はそれほどシンプルではありません。配管は上に向かったり下に向かったりしていますし、途中にバルブ(弁)もあります。水を送るにはポンプが必要ですが、通常の水を流すポンプを使えば、ポンプは壊れます。流水で比重の高い鉛の粒を送るのも、流体力学上難しいかもしれません。少なくとも今の施設ではだめだと思います。

  

  

 

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 高橋

かなり特別な施設を検討しないといけないですね。

 

小出先生

新しい配管は放射能が強いのでつくれませんから、今ある配管を何とか活用する必要があります。そして、どのような粉を、どの程度の流量で、どのようなポンプで送るべきかを、専門家が集まって検討する必要があります。

 

崩壊熱②ブログ用3.jpg高橋

金属を冷却に活用するには、山田先生のアイディアを技術的に検討すべきだと思いますか。

 

小出先生

当面は、私はそうだと思います。私は原子核工学の専門家です。流体力学の専門家や金属の専門家、そしてなによりも一番必要な人材は、福島のそれぞれの原発の細部の配管まで分かっている人たちです。設計図通りでないかもしれない。当時つくった人たちが必要です。そうした専門家が集まって徹底した検討が必要です。しかし、それはとてつもなく技術的に難しいことかもしれません。こんなことは、誰もやったことがないのです。原理的には事故当初から、私もヨーロッパの方から金属による冷却を提案頂いていました。しかし、原理と実際は大きな距離があります。

  

 

 

 

高橋

仮に技術を試行錯誤したとして、最後に政治的な決断ができるかどうかを心配しています。リスクを背負って決断できるのかと。

 

小出先生

政治のことですから私には分かりません。ただ言えることは、私が事故当時から遮水壁の提案をしても、一切、取り入れられなかったのです。ただし、今は地下水だけではなく、水と放射性物質を遮断することを全体として考えなければいけない段階に入っています。

 

高橋

最後にお聞きします。事故当時に考えられたことと、今の状況は悪くなっていますか、それとも良くなっていますか。

 

小出先生

遮水壁を含めて、事故の進捗に合わせて私は色々なことを提案してきました。それを採用して頂いていれば、今ほどひどくなってはいなかった。しかし、それは些末(さまつ)なことなのです。仮に私の提案がすべて受け入れられ実現されていたとしても、これから何十年、何百年にも亘って、この事故と向かい合わなければいけない。それは、とてつもないことなのです。原子力発電所を作った時から、とてつもないことは、すでに始まっていたのです。

(終)

 

 

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KAZE to HIKARIが独自に、東京電力から取材した1、2、3号機の溶け出した核燃料(デブリ)の『崩壊熱』データがあります。小出先生、『崩壊熱』は急速に低下しています。

 

■小出先生

ウランを核分裂させると『核分裂生成物』というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな放射性物質の集合体で、最初のウランより約1億倍の放射能を持っています。そして、100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます。

 

重い物質は陽子と中性子のバランスが合わないことが起こりがちで、不安定です。これを放射性物質と言い、これらは安定しようとして余分なエネルギーを吐き出し、放射線を出します。これを『崩壊』と言います。このとき発生する熱が『崩壊熱』の正体なのです。

 

『崩壊熱』が下がるのは、冷却水とはまったく関係ありません。『崩壊熱』は原子核が持っている性質で出てくるので、水でその量を増やしたり減らしたりすることはできないのです。これは、放射線となって余分なエネルギーを吐き出す、半減期と一体だと考えてください。これまでは、水で熱を外部に運び出しているだけです。

 

グラフの数値は、たぶん妥当です。事故前に原子炉の中にあった燃料棒の状態を知っているのは東京電力だけですから、彼らしかこの計算はできません。

 

200kWというのは電気ストーブが200台、これが格納容器の中にあるということです。運転時は、標準的な発電100万kW(2、3号機)だと、電気ストーブは3,000,000個発熱していることになります。運転を止めた瞬間(事故なども)は、それでも『崩壊熱』がありますから熱量は核分裂時の7%まで下がります。それは210,000個の電気ストーブです。ところが一日たつと、この『崩壊熱』は約10分の1まで下がります。1年たつとそのまた10分の1に減りますし、現在は200台になったわけです。

 

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小出先生インタビュー『崩壊熱』(前半)

 

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高橋

1、2、3号機の圧力容器から溶け出した燃料、つまりデブリがどのようなモノなのかイメージできません。3号機には、事故当時95トンの燃料があったと東電は言っています。これは、かりにすべてウランだとして比重(水の19倍)を考えると、1立方メーター(縦横高さ1m)で19トンになりますから、これがおよそ5個あると考えられます。完全な球体に換算すると直径2m強になります。3号機格納容器の底部の直径は20mです。さて、デブリというものはどのような成分ですか。

 

 ※デブリとは~ 「破片」の意のフランス語。ここでは、溶け出した核燃料(他のものが混じっているが)を言う

(資料:『福島第一原子力発電所 設備の概要』東京電力)

http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/intro/outline/outline-j.html

 

小出先生

もともと、原発の燃料は二酸化ウランです。これはウランを瀬戸物のように焼き固めたものです。ウランを核分裂させると『核分裂生成物』というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな放射性物質の集合体です。セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131というようなものが混然一体となって含まれています。100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます。

 

高橋

原子炉の中でウランの連鎖的核分裂(臨界)をおこさせると、約200種類もの放射性物質がどんどん生まれるのですね。さて、その状態で事故が起き核分裂は止まります。ところが、すでに生成されてしまった約200種類の放射性物質は、今度は何もしなくても自然に『崩壊』を始めます。それについて教えてください。

 

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原子は原子核と電子から成り立っています。一番シンプルなものは水素で、その原子核は陽子と呼ばれる素粒子1個で構成されています。その原子核に中性子を1つ加えると、重さが約2倍になり、重水素と呼ばれる水素ができます。陽子と中性子の数をどんどん増やしたものが他の元素の原子核になります自然界ではウランが一番重い物質です。重い物質は陽子と中性子のバランスが合わないことが起こりがちで、不安定です。これを放射性物質と言い、これらは安定しようとして放射線を出します。これを『崩壊』と言います。

 

高橋

放射性物質が放射線を出し続けて、その量が半分になることを『半減期』と言うことは、事故のおかげで良く知られました。

 

小出先生

核分裂するウラン235の『崩壊』の半減期は7億年で、核分裂をしないウラン238は45億年経たないと半減期を迎えません。実は、ウランはゆっくりしか放射線を出さないというものなのです。ところが、これをいったん核分裂させると半減期の短い、つまり大量の放射線を出す放射性物質を生み出します。これらは、最初のウランより約1億倍の放射能を持っています。

 

 

 

小見出し②.jpg

 高橋

つまり、私たち人間はわざわざ原子炉を使って、1億倍の放射能を持つ物質を作りだしたのですね。原子炉は放射線製造機だった。そして、「絶対に壊れない原子炉」が壊れて、放射性物質が漏れ出しました。このデブリは、放射線とともに『崩壊熱』を出しています。

 

小出先生

先ほど放射性物質は不安定と言いましたが、これは余分なエネルギーを持っているからです。物質は安定するためにこの余分なエネルギーを吐き出します。これが放射線です。しかし、自然界ではすべてのエネルギーは最終的には熱になります。そして、この熱が『崩壊熱』の正体なのです。

 

高橋

1,2,3号機に毎日400トンあまりの水を注入しています。これは、デブリの熱を冷やすためだと思っていましたが、『崩壊熱』自体を水でコントロールすることはできないのですね。

 

IMG_96116.jpg小出先生

そうです。水はまったく関係ありません。『崩壊熱』は原子核が持っている性質で出てくるので、水でその量を増やしたり減らしたりすることはできないのです。これは、放射線となって余分なエネルギーを吐き出す、半減期と一体だと考えてください。放射線、つまりエネルギーが全部出るまで待つしかありません。

 

 高橋

水を注入する理由を教えてください。

 

 

 小出先生

熱というものはたまります。正確にいうと、「与えられた熱」と「出ていく熱」の差分がたまります。格納容器の中に、『崩壊熱』を出すデブリがあると、いくぶんかは容器を伝わって「出ていく熱」があります。しかし、「出ていく熱」の量が「与えられた熱」より少ないと、どんどんたまっていきます。そのままにしていると、デブリはたまった熱で格納容器からメルトスルー(格納容器に穴をあけて落ちる)してしまいます。そこで、水で熱を外部に運び出し、「出ていく熱」の量を増やしているのです。

 

 

 

小見出し③.jpg

 説明①.jpg

高橋

ここに、KAZE to HIKARIが独自に、東京電力から取材した1、2、3号機の『崩壊熱』データがあります。2011年から1年ごと(10月時点)に急速に低下しています。2014年の予測値もあり、急速に低下していることが分かります。先生から見て、このデータの妥当性はいかがですか。

 

小出先生

この数値は、たぶん妥当です。事故前に原子炉の中にあった燃料棒の状態を知っているのは東京電力だけですから、彼らしかこの計算はできません。これをパッと見たところ、たぶん正しいでしょうし、異常なものではありません。1号機と2、3号機に数値の差があるのも、発電出力の違いがありますから妥当です。

 

高橋

すでに、200kW程度まで下がっています。この数値を分かりやすくご説明してください。

 

小出先生

たとえば家庭で使う電気ストーブは、それはおおむね1kKWです。ですから、200kWというのは電気ストーブが200台、これが格納容器の中にあるということです。正常の運転時は、標準的な発電100万kW(2、3号機)だと、原子炉内部での発熱は電気になる量の3倍必要で電気ストーブは3,000,000個発熱していることになります。運転を止めた瞬間(事故なども)は、それでも『崩壊熱』がありますから熱量は核分裂時の7%まで下がります。それは210,000個の電気ストーブです。ところが一日経つと、この『崩壊熱』は約10分の1まで下がります。1年たつとそのまた10分の1に減りますし、現在は200台になったわけです。

 

高橋

それでは水を止めてもいいですか。

 

小出先生

それは、「与えられた熱」と「出ていく熱」の差結.jpg分で考える必要があります。ストーブ200台でも熱がたまるのなら冷却は必要です。ただし、水は熱を外部に運びますが、同時に放射能まで運びだしているのです。ですから、冷却のためにこれ以上水を使うことは限界です。当初ウランの1億倍の放射能を持っていた核分裂生成物のうち寿命の短い放射性物質はすでになくなってくれており、『崩壊熱』はかなり下がりました。水を使って放射能を環境に運び出すことは、もうやめる段階に来ているのです。そして、200台の電気ストーブの熱を、水以外の方法で冷却することを検討をすべきです。

(次回、後半に続く)

 

 

 

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